6.4 類似からの予測

判断によるアプローチで、実務でよく行われて役立っているのは、類似からの予測です。例えば、住宅を評価プロセスを通じ値付けするのによく使われています。評価者は、ある住宅の市場価格を、地域で販売された似たような住宅と比べて評価します。類似の程度は考慮する属性に依存します。住宅評価では、土地の大きさ、住居の大きさ、ベッドルームとバスルームの数、ガレージ空間などの属性が通常考慮されます。

類似の製品や状況を考えたり、議論したりするだけでも、有益な(そして、時に重要な)情報をが生み出されます。この点を、以下の事例で見てみましょう。8

事例: 高校教育課程の設計

イスラエルの高校で不確実性下での判断と意思決定を教える教育課程を作成する業務が、学者と教師の小さなグループに割り当てられました。教育課程作成にどれだけ時間がかかるか予測するよう、各メンバーは言われました。回答は18から30カ月にわたっていました。教育課程設計の専門家である一人のメンバーは世界中で類似の教育課程作成を調べるよう言われました。彼の結論は、検討した類似のグループのうち40%は作成を完了できず、残りは7年から10年かかっていた、というものでした。このイスラエルのプロジェクトは完了までに8年かかりました。

明らかに、類似からの予測には挑戦が伴います。バイアスを生じるやすい単一の類似よりも、複数の類似を基に予測したいものです。しかし、それらを特定することは挑戦になり得ます。同様に、属性は複数検討したいものですが、それらを特定し、比較することさえ必ずしも簡単ではありません。いつものように、これらを比較して予測プロセスを実行するなら、体系化されたアプローチを用いることをお薦めします。属性をランク付けして、ランク付けのプロセスを記録し、詳細なスコア作成メカニズムを開発することはいつも役に立ちます。

構造化された類似

別の方法として、 Green & Armstrong (2007) が提案した、専門家のパネルから成る構造化されたアプローチが実行可能です。コンセプトはDelphiと似ています。ただ、予測業務は類似を検討することで行われます。まず、ファシリテーターが任命されます。次に、構造化されたアプローチは以下のような手順を踏みます。

  1. 類似の状況に経験がありそうな専門家のパネルを召集。
  2. 業務/挑戦を設定し、専門家に配る。
  3. 専門家は、できるだけ多くの類似を特定、描写して、各類似に基づき予測を生成。
  4. 専門家は、各類似がターゲットとする状況と似ている点、違っている点を書き出し、各類似のターゲットとする状況への類似度を点数付け。
  5. ファシリテーターが設定されたルールを使って予測を導き出す。ルールには加重平均が使える。専門家が各類似に付けた類似度の点数を順に並べることで、加重を導く。

Delphiアプローチと同様、専門家の匿名性は、創造性を抑圧しない点で利点ですが、協力を妨げるおそれはあります。GreenとArmstrongの研究結果では、専門家間の協力に利得はありませんでした。彼らの鍵となる発見は、多くの(2つ超の)類似を挙げ、類似に直接の経験がある専門家が、最も正確な予測を生成していた、ということです。

参考文献

Green, K. C., & Armstrong, J. S. (2007). Structured analogies for forecasting. International Journal of Forecasting, 23(3), 365–376. [DOI]
Kahneman, D., & Lovallo, D. (1993). Timid choices and bold forecasts: A cognitive perspective on risk taking. Management Science, 39(1), 17–31. [DOI]

  1. この事例は、 Kahneman & Lovallo (1993) にあったものです。↩︎