3.4 古典的分解

古典的分解手法は1920年代に始まりました。比較的単純な手順であり、時系列分解のその他ほとんどの手法の基点です。加法分解と乗法分解の2つの形式があります。季節周期\(m\)(例えば、四半期データなら\(m=4\)、月次データなら\(m=12\)、週間パターンがある日次データなら\(m=7\))の時系列について、これら2つの手順を以下に記します。

古典的分解では、毎年の季節成分は一定を前提とします。乗法の季節性では、季節成分を形成する\(m\)個の値のことを「季節インデックス」と呼ぶこともあります。

加法分解

ステップ1
\(m\)が偶数なら、トレンド・循環成分\(\hat{T}_t\)\(2\times m\)-MAで計算。\(m\)が奇数なら、トレンド・循環成分\(\hat{T}_t\)\(m\)-MAで計算。
ステップ2
トレンド除去後の系列を\(y_t - \hat{T}_t\)と計算。
ステップ3
各季節ごとの季節成分を推計するため、トレンド除去後の系列値を季節ごとに単純平均。例えば、月次データでは、3月の季節成分はトレンド除去後の3月の値全ての平均にする。それから、季節成分の合計がゼロになるように調整。月ごとの値を並べて季節成分とし、データの年数分だけ複製。これで\(\hat{S}_t\)を得る。
ステップ4
残余成分は、元のデータから推計した季節成分とトレンド・循環成分を控除して計算: \(\hat{R}_t = y_t - \hat{T}_t - \hat{S}_t\)

3.13は、米国小売業の就業者数を古典的加法分解したものです。

us_retail_employment %>%
  model(
    classical_decomposition(Employed, type = "additive")
  ) %>%
  components() %>%
  autoplot() +
  labs(title = "米国小売業の就業者数: 古典的加法分解")
米国小売業の就業者数: 古典的加法分解

図 3.13: 米国小売業の就業者数: 古典的加法分解

乗法分解

引き算が割り算に替わりますが、古典的乗法分解は同様です。

ステップ1
\(m\)が偶数なら、トレンド・循環成分\(\hat{T}_t\)\(2\times m\)-MAで計算。\(m\)が奇数なら、トレンド・循環成分\(\hat{T}_t\)\(m\)-MAで計算。
ステップ2
トレンド除去後の系列を\(y_t/ \hat{T}_t\)と計算。
ステップ3
各季節ごとの季節成分を推計するため、トレンド除去後の系列値を季節ごとに単純平均。例えば、月次データでは、3月の季節インデックスはトレンド除去後の3月の値全ての平均にする。それから、季節インデックスの合計が\(m\)になるように調整。月ごとのインデックスを並べて季節成分とし、データの年数分だけ複製。これで\(\hat{S}_t\)を得る。
ステップ4
残余成分は、元のデータを推計した季節成分とトレンド・循環成分で割って計算: \(\hat{R}_{t} = y_t /( \hat{T}_t \hat{S}_t)\)

古典的分解についてのコメント

古典的分解は今でも広く使われていますが、お薦めはしません。今では、もっと優れた手法がいくつもあるからです。古典的分解の問題点をいくつか以下に要約しました。

  • 最初と最後のいくつかの観測値についてはトレンド・循環成分推計が得られない。例えば、\(m=12\)なら、最初の6個と最後の6個の観測値についてトレンド・循環成分が推計できない。その結果、残余成分の推計も同時期は存在しない。
  • トレンド・循環成分推計が、データ中の急な上昇や下降を過剰に平滑化する傾向がある。
  • 古典的分解は季節成分は毎年同一で繰り返すことを前提としている。多くの系列について理にかなった前提ではあるが、より長期の系列ではそうでないこともある。例えば、エアコンが普及するにつれ、電力需要パターンは経年変化してきた。多くの地点では、電力需要の季節パターンが数十年前には冬季に(暖房器具のため)最大需要だったのが、現在は夏季に(エアコンのため)最大需要に変わっている。古典的分解はこうした季節性の経年変化を捉えられない。
  • 時系列が少数の異常な値を含むことがある。例えば、月次航空乗客数は労使紛争の影響を受け、紛争期間中いつもと異なる値になり得る。古典的手法は、こうした異常値の影響を受けやすく、ロバスト(頑健)でない。