第 10 章 動学的回帰モデル

前2章の時系列モデルでは、系列自身の過去の観測値情報を使えましたが、他の関連しそうな情報は入れられませんでした。例えば、休日、競合他社の行動、法律の改正、経済全般、などの外部変数の影響で過去の変動のいくらかを説明できるかもしれず、それによってより正確な予測ができるかもしれません。他方、7章の回帰モデルでは、予測変数を通じて多くの関連する情報を使えましたが、ARIMAモデルなら取り扱える微妙な時系列の強弱は入れられませんでした。本章では、ARIMAモデルを拡張して、モデルに他の情報を入れられるようにする方法を考えます。

7章では、以下のような表記の回帰モデルを考えました。 \[ y_t = \beta_0 + \beta_1 x_{1,t} + \dots + \beta_k x_{k,t} + \varepsilon_t \] ただし、\(y_t\)\(k\)個の予測変数(\(x_{1,t},\dots,x_{k,t}\))の線形関数で、\(\varepsilon_t\)はいつも通り無相関な誤差項(つまり、ホワイトノイズ)と想定しました。結果として出てくる残差に有意な相関がないか審査するため、Ljung-Box検定などの検定を考えました。

本章では、回帰からの誤差に自己相関があって構わない、とします。この視点の変化を強調するため、方程式の\(\varepsilon_t\)\(\eta_t\)に入れ替えます。誤差系列\(\eta_t\)はARIMAモデルに従うと想定します。例えば、\(\eta_t\)がARIMA(1,1,1)モデルに従っているなら、以下のように書けます。 \[\begin{align*} y_t &= \beta_0 + \beta_1 x_{1,t} + \dots + \beta_k x_{k,t} + \eta_t\\ & (1-\phi_1B)(1-B)\eta_t = (1+\theta_1B)\varepsilon_t \end{align*}\] ただし、\(\varepsilon_t\)はホワイトノイズ系列です。

ここではモデルに誤差項が2つあることに留意してください。\(\eta_t\)と表記した回帰モデルからの誤差と、\(\varepsilon_t\)と表記したARIMAモデルからの誤差の2つです。ホワイトノイズと想定するのは、ARIMAモデルの誤差だけです。