8.7 ETSモデルによる予測

\(t>T\)では全て\(\varepsilon_t=0\)と設定した上で、\(t=T+1,\dots,T+h\)で方程式を繰り返すと、モデルから点予測が得られます。

例えば、ETS(M,A,N)のモデルでは、\(y_{T+1} = (\ell_T + b_T )(1+ \varepsilon_{T+1})\)です。なので、\(\hat{y}_{T+1|T}=\ell_{T}+b_{T}\)となります。同様に、 \[\begin{align*} y_{T+2} &= (\ell_{T+1} + b_{T+1})(1 + \varepsilon_{T+2})\\ &= \left[ (\ell_T + b_T) (1+ \alpha\varepsilon_{T+1}) + b_T + \beta (\ell_T + b_T)\varepsilon_{T+1} \right] (1 + \varepsilon_{T+2}) \end{align*}\] ですから、\(\hat{y}_{T+2|T}= \ell_{T}+2b_{T}\)となります、と続きます。これらの予測はHoltの線形手法からの予測と同じですし、ETS(A,A,N)モデルからの予測とも同じです。このように、手法から得られる点予測と、その手法の根底にある2つのモデルから得られる点予測は(同じパラメータ値が使われていると想定すると)同じです。このように構築されるETS点予測は、乗法季節性を持つモデルを除いて、予測の分布の平均に等しくなっています。 (Hyndman et al., 2008)

ETSモデルから予測を得るには、fableパッケージのforecast()関数を使います。この関数はいつも予測の分布の平均を返します。たとえ、上に述べた伝統的な点予測と異なっても、です。

fit %>%
  forecast(h = 8) %>%
  autoplot(aus_holidays)+
  labs(title="オーストラリア国内、休暇旅行", level = "区間予測",
       y="宿泊客数 (百万人)")
ETS(M,N,A)モデルを使ったオーストラリア国内、休暇旅行の宿泊客数の予測

図 8.12: ETS(M,N,A)モデルを使ったオーストラリア国内、休暇旅行の宿泊客数の予測

区間予測

統計モデルの大きな利点は区間予測も生成できることです。点予測手法を使っただけではできないことができるのです。区間予測はモデルが加法か乗法かで異なります。

ほとんどのETSモデルでは、区間予測は以下のように書けます。 \[ \hat{y}_{T+h|T} \pm c \sigma_h \] ただし、\(c\)は被覆確率で決まり、\(\sigma_h^2\)は予測分散です。\(c\)値は表5.1で与えられます。ETSモデルでは\(\sigma_h^2\)の公式は複雑になります。詳細は Hyndman et al. (2008) の6章にあります。表8.8には、最も簡単な加法ETSモデルの公式だけを載せています。

表 8.8: 各加法状態空間モデルの予測分散公式。ただし、\(\sigma^2\)は残差の分散、\(m\)は季節周期、\(k\)\((h-1) /m\)の整数部分(つまり、予測期間内の\(T+h\)の1つ前時点までの完全な年の数)
モデル 予測分散: \(\sigma_h^2\)
(A,N,N) \(\sigma_h^2 = \sigma^2\big[1 + \alpha^2(h-1)\big]\)
(A,A,N) \(\sigma_h^2 = \sigma^2\Big[1 + (h-1)\big\{\alpha^2 + \alpha\beta h + \frac16\beta^2h(2h-1)\big\}\Big]\)
(A,A\(_d\),N) \(\sigma_h^2 = \sigma^2\biggl[1 + \alpha^2(h-1) + \frac{\beta\phi h}{(1-\phi)^2} \left\{2\alpha(1-\phi) +\beta\phi\right\}\)
                    \(\mbox{} - \frac{\beta\phi(1-\phi^h)}{(1-\phi)^2(1-\phi^2)} \left\{ 2\alpha(1-\phi^2)+ \beta\phi(1+2\phi-\phi^h)\right\}\biggr]\)
(A,N,A) \(\sigma_h^2 = \sigma^2\Big[1 + \alpha^2(h-1) + \gamma k(2\alpha+\gamma)\Big]\)
(A,A,A) \(\sigma_h^2 = \sigma^2\Big[1 + (h-1)\big\{\alpha^2 + \alpha\beta h + \frac16\beta^2h(2h-1)\big\}\)
                    \(\mbox{} + \gamma k \big\{2\alpha+ \gamma + \beta m (k+1)\big\} \Big]\)
(A,A\(_d\),A) \(\sigma_h^2 = \sigma^2\biggl[1 + \alpha^2(h-1) + \gamma k(2\alpha+\gamma)\)
                    \(\mbox{} +\frac{\beta\phi h}{(1-\phi)^2} \left\{2\alpha(1-\phi) + \beta\phi \right\}\)
                    \(\mbox{} - \frac{\beta\phi(1-\phi^h)}{(1-\phi)^2(1-\phi^2)} \left\{ 2\alpha(1-\phi^2)+ \beta\phi(1+2\phi-\phi^h)\right\}\)
                    \(\mbox{} + \frac{2\beta\gamma\phi}{(1-\phi)(1-\phi^m)}\left\{k(1-\phi^m) - \phi^m(1-\phi^{mk})\right\}\biggr]\)

区間予測の公式が未知なETSモデルも2、3あります。そうしたケースでは、forecast()関数は、将来の標本のパスをシミュレートして、それらのシミュレートされた将来パスの百分位から区間予測を計算します。

参考文献

Hyndman, R. J., Koehler, A. B., Ord, J. K., & Snyder, R. D. (2008). Forecasting with exponential smoothing: The state space approach. Springer-Verlag. http://www.exponentialsmoothing.net