6.1 限界を知る

判断による予測は主観的です。ですから、バイアスや限界があります。

判断による予測は一貫性を欠くことがあります。毎回同じ算術式から生成できる統計による予測と異なり、判断による予測は人の認識に高度に依存するため、認識の限界に対しぜい弱です。例えば、記憶力に限界があるため、最近のイベントを実際以上に重要と認識する一方、より離れた過去の重大イベントは無視してしまう。注意できる範囲に限界があるため、重要な情報を見逃してしまう。因果関係を誤解して、誤った推論をしてしまう、といった具合です。さらに、人の判断は心理的要因の効果によって振れることがあります。部長が、前向きな気分の日にはいくらか楽観的な予測をし、後向きな気分の日にはいくらかあまり楽観的でない予測をする、なんてことはありがちでしょう。

目標と予測が明確に区分されていない場合(1章で定義しました)、個人的、あるいは、政治的配慮が判断を曇らせます。例えば、営業部門の部長が、自分が作成する予測が売上高予想(目標)として使われると知っていれば、業績を良く見せる(つまり、期待された目標を上回る)ために予測を低めに設定しがちになるかもしれません。目標と予測が明確に区分されているケースでさえ、楽観や希望的観測が判断の足を引っ張ることがあります。例えば、新製品発売に向けて働いているチームが、その失敗を予測することはありそうにありません。後で議論するように、この楽観は、グループ・ミーティングの設定でより際立ったものになり得ます。「マーケティングや営業部門の同僚の熱狂には注意しましょう」4.

判断による予測でよく見られるもう一つの望ましくない性質は、アンカリング効果です。最初に参照点を見て馴染んでしまうと、その後の予測はその参照点に一致、もしくは、近くなる傾向がある、というものです。例えば、最後の観測値を参照点とするのは、よくあることです。予測者が直前の情報に必要以上に影響され、予測プロセスでそれをより重視してしまうのです。アンカリングは保守的に働くこともあります。新しい、より足元の情報を過小評価して、体系に組み込まれたバイアスを生み出してしまうのです。

参考文献

Fildes, R., & Goodwin, P. (2007b). Good and bad judgment in forecasting: Lessons from four companies. Foresight: The International Journal of Applied Forecasting, 8, 5–10.

  1. Fildes & Goodwin (2007b)↩︎