第 6 章 判断による予測

判断を使って予測することは、実務上よくあることです。できるのは判断による予測だけ、というケースは多くあります。過去のデータが全くないとか、新製品を発売するとか、市場に新規参入者が現れるとか、市場状況が完全に新しい特異なものになるとか、というケースです。例えば、2012年12月、オーストラリア政府は世界で初めてたばこの包みに会社のロゴを使うことを禁じ、全てのたばこの包みの色をダーク・グリーンにする法律を成立させました。こうした政策の効果を予測するには、判断を適用するしかありません。過去に先例などないからです。

データが不完全であったり、いくらか遅れてしか入手できない場合もあります。例えば、GDPは四半期ごとにしか入手できないので、中央銀行は、ナウキャストとして知られる手順で、現在の経済活動水準を予測しますが、その際、判断を含めます。

この分野3の研究によれば、(i)重要なドメイン知識と(ii)よりタイムリーで最新の情報が予測者にあると、判断による予測の正確性が改善します。判断によるアプローチは、そうした変化、情報、イベントに対して素早く調整できるからです。

判断による予測は年を経るごとにその必要性が認められ、科学として受け入れられるようになってきました。さらに重要なことは、判断による予測は、上手く構造化・体系化されたアプローチによって改善できるという認識が広がった結果、その質もまた向上してきたことです。判断による予測は主観的で限界があることを認識しておくことは大切ですが、上手く構造化・体系化されたアプローチを実行すれば、これらの限界を抑えて顕著に予測正確性を改善することができるのです。

判断による予測が一般的に使われる場面が3つあります。(i)入手可能なデータがなく、そのため統計的手法は使えず、判断による予測が唯一の実行可能なアプローチである場面、(ii)データは入手可能で、統計による予測を生成し、次にそれを判断によって調整する場面、(iii)データは入手可能で、統計による予測と判断による予測を別々に生成し、次にそれらを結合する場面、の3つです。ここで明確にしておきますが、データが入手可能な場合は、統計的手法(例えば、本書の他章で議論する手法)の適用が望ましく、いつもそこから始めるべきです。統計による予測は判断だけを使った予測よりも通常優れています。本章の大半は、入手可能なデータがない第一の場面に焦点を当てます。最後の節で、統計による予測を判断によって調整することを議論します。13.4

参考文献

Lawrence, M., Goodwin, P., O’Connor, M., & Önkal, D. (2006). Judgmental forecasting: A review of progress over the last 25 years. International Journal of Forecasting, 22(3), 493–518. [DOI]

  1. Lawrence et al. (2006)↩︎