6.6 新製品予測

新製品の定義には、いろいろあります。発売された全く新しい製品、(「新しく、改善された」)既存製品の変形、値付け表が変更されただけの既存製品、既存製品の新市場参入でさえ、新製品かもしれません。

新製品予測では、過去のデータが入手不可能なので、判断による予測が利用可能な唯一の手法なのが普通です。これまでに概略を述べてきたアプローチ(Delphi、類似からの予測、シナリオ予測)は全て、新製品の需要予測に適用可能です。

新製品の需要予測により特化した他の手法もあります。実務で広く適用されている3つの手法を簡潔に描いてみます。これまで議論したものと比べると構造化が弱く、その結果、バイアスを含む予測になりがちです。

営業部隊合成

このアプローチでは、会社の販路/支店/店舗ごとに営業マンが予測を生成、それを集計します。営業部長が管理する販路の需要を予測することになります。営業マンは通常、顧客と製品の交流に最も近く、顧客の購買意図について直観を発達させていることがしばしばあります。この貴重な経験と技量を予測にもたらしてくれます。

しかし、営業マンに予測を生成してもらうと、予測者とユーザーを区分するという鍵となる原理を破ることになり、あちこちの方向にバイアスを生じるおそれがあります。営業マンは事前に設定された売上予測や予想と比較して業績を評価されるのが普通です。その場合、予測者としての営業マンは、低い予測を生成することで自己利得バイアスを生むかもしれません。他方で、熱狂的な営業マンが、楽観に酔って、高い予測を生成する姿も想像できます。

さらに、有能な営業マンは必ずしも有能な予測者でも、十分な情報を持つ予測者でもありません。大半の営業マンは予測の公式な訓練を全く、あるいは、限定的にしか受けていません。最後に、例えば、新製品がお店で売り切れたり、発売されなかった場合、営業マンは顧客の不満を肌身で感じることになります。そうした交流は営業マンの判断を曇らせます。

幹部意見

営業部隊合成と比べて、このアプローチは経営組織のトップにいる人たちに予測を生成してもらいます。そうした予測は通常、グループ・ミーティングで、各幹部が自身の社内分野から情報を提供して、生成されます。社内の異なる機能分野から幹部を得ることで、グループ内の技能と知識の多様性が促進されます。

このプロセスは、先にも述べた、グループ・ミーティングの利点と弱点の全てを有しています。この設定では、予測プロセスを文書にして根拠を記載することが大切です。つまり、グループ・ミーティングが生み出すバイアスを低減するには、幹部は説明責任を負う必要があります。この設定にDelphiアプローチの変形を適用する余地があるかもしれません。例えば、先に述べた「予測して、話し合って、予測する」プロセスです。

顧客意図

新製品や既存製品の変形への需要予測には、顧客意図が使えます。顧客にアンケートを記入してもらい、製品購買の意図を尋ねるのです。構造化されたアンケートを使って、顧客に製品購買の可能性を尺度付けするよう依頼します。例えば、確かに買う、買いそう、買うかも、買わなさそう、まず買わない、といった具合にです。

代表的なサンプルの収集、時間面でも費用面でも効率的な手法の適用、無回答の取り扱い、などのアンケート調査を設計する上での挑戦をこなす必要があります。9

さらに、このアンケート調査設定では、購買意図と購買行動の関係を心に留めておかなければなりません。顧客は必ずしも、そうすると言った通りにするわけではありません。多くの研究が顧客意図と顧客行動に正の相関を見つけていますが、この相関の強さはさまざまです。さまざまにしている要因には、データ収集と製品発売の時間差、「新」製品の定義、業界のタイプなどがあります。行動理論によると、行動の直前に意図を測ると、意図は行動を上手く予測しています。10 完全な新製品なのか、既存製品の変形なのか、によって意図と行動の時間差は違います。また、完全な新製品よりも、既存のよく知っている製品の変形の方が、意図と行動の間の相関がより強いことが分かっています。

どの手法を新製品予測に使うにせよ、生成された予測とその背景にある理由付けを徹底的に文書化し、実績が入手可能になったら評価できるようにしておくことが大切です。

参考文献

Groves, R. M., Fowler, F. J., Couper, M. P., Lepkowski, J. M., Singer, E., & Tourangeau, R. (2009). Survey methodology (2nd ed). John Wiley & Sons. [Amazon]
Randall, D. M., & Wolff, J. A. (1994). The time interval in the intention-behaviour relationship: Meta-analysis. British Journal of Social Psychology, 33(4), 405–418. [DOI]

  1. Groves et al. (2009)↩︎

  2. Randall & Wolff (1994)↩︎