8.4 指数平滑化法の分類学

指数平滑化法は、これまで見てきたものに限りません。トレンド成分と季節成分の組み合わせで種類を考えると、表8.5に挙げた9つの指数平滑化法があり得ます。各手法には、「トレンド」成分と「季節」成分のタイプを定義する文字のペア(T,S)のラベルを付けています。例えば、(A,M)は加法トレンドと乗法季節性を持つ手法で、(A\(_d\),N)は減衰トレンドを持つが季節性はない手法、などです。

表 8.5: 指数平滑化法の2方向分類
トレンド成分
季節成分
N A M
(なし) (加法) (乗法)
N (なし) (N,N) (N,A) (N,M)
A (加法) (A,N) (A,A) (A,M)
A\(_d\) (加法減衰) (A\(_d\),N) (A\(_d\),A) (A\(_d\),M)

これらの手法のいくつかは、既に別の名前で見てきたものです。

略記 手法
(N,N) 単純指数平滑化
(A,N) Holtの線形手法
(A\(_d\),N) 加法減衰トレンド手法
(A,A) 加法Holt-Winters法
(A,M) 乗法Holt-Winters法
(A\(_d\),M) Holt-Wintersの減衰手法

このタイプの分類は Pegels (1969) が最初に提案しました。そこでは、乗法トレンドを持つ手法も含めていました。のちに、加法減衰トレンドを持つ手法を含めるよう拡張したのは Gardner (1985) で、乗法減衰トレンドを持つ手法を含めるよう拡張したのは J. W. Taylor (2003) です。乗法トレンド手法は良くない予測を生成しがちなので、本書では検討しません。全ての指数平滑化法のより徹底した議論は、 Hyndman et al. (2008) を参照してください。

8.6には、表8.5の9つの指数平滑化法を適用する再帰的方程式を載せています。手法を適用するための、\(h\)期先予測を生成する予測方程式と平滑化方程式を、各セルに載せました。

表: (#tab:pegels) 再帰的計算と点予測のための公式。どのケースでも、\(\ell_t\)は系列の\(t\)時点の水準、\(b_t\)\(t\)時点の傾き、\(s_t\)は系列の\(t\)時点の季節成分、\(m\)は1年内の季節の数、を表します。\(\alpha\)\(\beta^*\)\(\gamma\)\(\phi\)は平滑化パラメータで\(\phi_h = \phi+\phi^2+\dots+\phi^{h}\)\(k\)\((h-1)/m\)の整数部分です。

参考文献

Gardner, E. S. (1985). Exponential smoothing: The state of the art. Journal of Forecasting, 4(1), 1–28. [DOI]
Hyndman, R. J., Koehler, A. B., Ord, J. K., & Snyder, R. D. (2008). Forecasting with exponential smoothing: The state space approach. Springer-Verlag. http://www.exponentialsmoothing.net
Pegels, C. C. (1969). Exponential forecasting: Some new variations. Management Science, 15(5), 311–315. [DOI]
Taylor, J. W. (2003). Exponential smoothing with a damped multiplicative trend. International Journal of Forecasting, 19(4), 715–725. [DOI]