2.3 時系列データのパターン

時系列データを描写するのに、これまで「トレンド」や「季節性」といった言葉を使ってきましたが、より慎重に定義してみます。

トレンド

トレンド(趨勢)が存在するのは、データに長期的な増加あるいは減少があるとき。直線である必要はない。増加トレンドから減少トレンドに移行すると言うときなど、「方向の転換」を指すためにトレンドと言うこともある。図2.2で描いた抗糖尿病薬の売上高データにはトレンドがある。

季節性

季節パターンは、時系列データが日付や曜日などの季節要因の影響を受けるときに生じる。季節性は常に固定された既知の期間内のもの。月次の抗糖尿病薬売上高は季節性を示している。暦年末に医薬品のコストが変化することに一因がある。

循環性

循環(サイクル)とは、データが固定ではない周期で上昇と下降を示すこと。この変動は通常経済状況のせいで、しばしば「景気循環」と関連している。循環の始めから終わりまで2年以上かかるのが普通。

循環と季節パターンを混同する人が多くいますが、全く異なるものです。変動が固定周期でないなら循環、変動が固定周期でかつ暦と関連しているなら季節パターンです。一般に、循環の一周期は季節パターンの一周期よりも平均すると長く、循環の振れ幅は季節パターンの振れ幅よりも大きい傾向があります。

多くの時系列データはトレンド、循環、季節性を含んでいます。予測手法を選択する際は、まずデータ内の時系列パターンを特定し、次に特定したパターンを適切に取り込める手法を選択することになります。

2.3の例は、これら構成要素の異なる組み合わせを示したものです。

異なるパターンを示す時系列データ4例

図 2.3: 異なるパターンを示す時系列データ4例

  1. 月次住宅販売戸数(左上)には、各年内に強い季節性と、約6–10年周期の強い循環変動があります。この期間内では明らかなトレンドはありません。
  2. 米国短期国債契約数(右上)は、1981年の連続した100営業日のシカゴ市場での結果です。季節性はありませんが、明らかな下方トレンドがあります。より長期間を分析すれば、この下方トレンドは実際には長期周期の循環の一部かもしれませんが、100日分ではトレンドに見えます。
  3. オーストラリア四半期発電量(左下)には強い増加トレンドと強い季節性があります。循環変動は見られません。
  4. Google株価終値の日次変動(右下)には、トレンド、季節性、循環性のどれも見られません。予測可能とは思えないランダムな変動が見られるだけで、予測モデル開発の助けとなるような強いパターンはありません。